私には兄弟姉妹が沢山いる
今日その中で特に気にかけている義妹の婚約…国内での披露式典である
***
「殿下」
「ルルーシュ、婚約おめでとう」
「有難うございます」
「綺麗だね、小さかったと思っていた君も立派なレディだ」
「殿下…お戯れを」
「そんな事はないよ。…よそよしいね、兄とは呼んでくれないのかい?」
「…公式の場なので」
「残念だな」
「外の空気を吸いたいのですが、お付き合い、頂けますか?」
「勿論だよ、ルルーシュ」
***
華やかな会場を後にし、
二人で横に並び空を見上げた
「月が出ていないのが残念だね」
と傍らの妹に声を掛けると
「新月の夜も好きですよ、星が綺麗に見えますから」
月のない夜の美しさを説かれた
「そうだね、流れ星でも流れそうな良い夜だ」
二人何も言わず星を眺めていると
ルルーシュが楽しい事を思い着いたというように
「あぁでも、月が出ていたら良かったのに」
と言い出した
「どうしてだい?」
先程は自分の言葉に同調しなかったのに、と聞き返すと
「月に惑わされた事にできるからです」
笑みを浮かべて意味深なことを言った
「君が何かに惑わされたいと思うのかい?」
言外に意外と込めて隣を向いて言えば
隣の義妹は先ほどの楽しそうな様子から一転
今日最初に会った時のような硬い面持ちをしていた
「ルル…」
「兄上、私はこの国の皇族として
生まれ、育ち、
生きて参りました
そして皇族としての務めを果たすべく
この度の婚姻を受け入れ
降嫁いたします」
彼女の決意を静かに聞いていると
一瞬考えるようなそぶりをしてから
「お兄様、戯言を聞いて頂く事をお許し頂けますか?」
と尋ねてきた
「なんだい、ルルーシュ?」
この賢い義妹が紡ぐ戯言とはいったいどんなものだろうと
続きを促すと
その薄い唇から思いもがけない言葉が零れた
「シュナイゼル
愛しておりました」
時が
止まった気がした
視界の端で星が流れるのを見送った
「……。」
言葉を紡ぐ事が出来ないでいると
彼女は
嬉しそうな
悲しそうな
笑顔を浮かべてから
妹として
言葉重ねるように言い
完璧な淑女の態度で辞去の挨拶をして
去っていった
***
華奢な背中を追い
抱き締めて
愛してると囁いていたら
彼女は今
隣りに居たのだろうか
愛していたよ
愛しているよ
私の……。
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